
シルクナイトキャップやシルク枕カバーは美髪の為には是非取り入れたいアイテム。SNSを見ているとネット通販で買われる方が多いようですね。
美容アイテムとして身近になっているシルクですがシルクの知識はなんとなくしか持っていない方、多いのではないでしょうか。
ただ肌に良さそう~といった漠然とした知識ではなく、絹の種類や織り方などのより深い知識を持っておくとシルク製品を購入する際大変役に立ちます。
私は過去に通販で絹の偽物やかなり質の悪い物にあたってしまった事があります。このような被害者が増えない為にもシルクの種類や本物と偽物の見分け方、洗濯方法など分かりやすく解説しました。
私は以前ご縁があり地元のアパレル会社の絹事業に関わった事がありまして絹にはそこそこ詳しい方だと自負しています。
細かいところまで説明すると膨大な文字数になる為、消費者として最低限知ってほしい事だけを簡潔にまとめましたので参考にして下さい。
シルク(絹)の効果
シルク(絹)は約18種類のアミノ酸が含まれているタンパク質繊維。人間の皮膚に近いため肌によく馴染み外的刺激から保護してくれると言われています。
特に糸の表面を覆っているセリシンは天然保湿因子に似たアミノ酸組成をもっているため乾燥肌に良く、化粧品にも配合されているほど。
そのため肌の弱い赤ちゃん、敏感肌、アトピー肌、乾燥肌の方には特に重宝されています。
シルクには下記の効果があると言われています。
- 吸放湿作用
- 保温作用
- 摩擦軽減
- 紫外線保護
- 静電気防止
夏はサラっと、冬はポカポカと、まるでエアコンディショナーのような働きをしてくれるので季節問わず使える生地です。

シルク(絹)の種類
シルクといっても種類は様々。
どんな特徴があるのかを知っておく事で用途にあった最適なシルクアイテムを選択できるようになります。
蚕の種類
蚕の種類によって下記の2つに分類されます。
- 家蚕糸(かさんし)
- 野蚕糸(やさんし)
「家蚕糸」は人間の都合よく品種改良された言わば「家畜化」された蚕の繭を使った糸の事です。不純物がほぼ混ざっておらず真っ白で見た目にも美しい繭を形成します。普段よく目にするものはほぼこちらです。
「野蚕糸」はワイルドシルクとも言われており、世界中に存在している野生の蚕もしくは野生に近い環境の蚕の繭を使ったシルクの事です。少し茶色がかっており染色しづらいため、そのままのナチュラルな風合いを楽しむ事もできます。
しっとりと滑らかで、好きな色を選択したいのであれば家蚕糸を。シャリ感とナチュラルな風合いを好むのであれば野蚕糸を選ぶと良いでしょう。

糸の種類
絹と言っても糸には種類があります。
ざっくりとした種類は下記の通り。
- 生糸(きいと)
- 絹紡糸(けんぼうし)
- 絹紬糸(けんちゅうし)
「生糸」は繭から引き出した糸を数本揃え合わせたもので、よく正絹といわれているものがそれにあたります。長繊維で光沢があり大変美しい糸で高級品です。
「絹紡糸」は生糸を生産する際に出たクズ糸を寄せ集めて1本の糸にしたものです。クズ糸とは言え、絹ならではの光沢感はしっかりあります。生糸に比べると含気量が大きいのでふんわりとして肌あたりの良い生地になります。
「絹紬糸」は絹紡糸を作る際に出たクズ糸を寄せ集めたものでして、言い方は悪いのですが生糸のクズのクズ、といったところでしょうか。繊維長が短くて生糸、絹紡糸どちらにも使用できないもので作られています。太い糸で所々節があります。
品質順に並べると、
生糸 > 絹紡糸 > 絹紬糸
となります。

他にも玉糸(二匹以上で作られた繭)、真綿(蚕の繭を煮て引き伸ばし綿にした物)などがあります。
織り方の種類
どの生地にも共通するように、織り方によって生地の質感や見た目がかなり変わります。
- 平織(ひらおり)
- 斜文織(しゃもんおり)
- 朱子織(しゅすおり)
「平織」は縦横交互に交差する織り方で摩擦に強くよく用いられる織り方で光絹がこれにあたります。通常縦横同じ太さの糸1本で織るのに対し、縦を細い糸2本にして織ったものを羽二重と言います。
「斜文織」は綾織とも言い織り目が斜めに走っているのが特徴です。平織よりも柔らかく、シワが寄りにくいです。ツイルシルクがこれにあたります。
「朱子織」はサテン織りとも言われており縦、横どちらかが浮きあがるように織られており、光沢が一番あり大変柔らかい生地です。サテンシルクがこれにあたります。

洗濯の方法
シルク(絹)は大変繊細なので通常通り洗濯するのは避けて下さい。
間違ったやり方で洗うとシルクの特徴でもある光沢感と滑らかさが失われてしまいます。
洗濯のコツを下記にしるしますので参考にして下さい。
手洗い
シルク製品はなるべく手洗いした方が安心です。
洗面器にぬるま湯をはり、洗剤(可能なら「おしゃれ着洗い用」が望ましい)を入れて優しく押し洗い。
タオルにはさんでトントンと軽く叩くように水分を取ったら陰干しします。
洗濯機
洗濯機使用の場合は洗濯ネットに必ず入れ、なるべく負担のかからない洗剤(「おしゃれ着洗い用」が最適)で、可能ならドライコースで洗う。
脱水は短い方が良いです。
乾燥機はなるべく使用せず、脱水が終わったら陰干しします。
シルク(絹)の本物と偽物の見分け方
私は過去、ネット通販でシルク(絹)の偽物や質の悪い物にあたってしまった事がある為、それ以来シルク製品を買う際は以前シルク事業に関わらさせていただいた会社から買うか、信頼のおける布屋で直接見て触って選び自分で作成するようにしています。
しかし皆さんは恐らくネット通販を利用される事が多いかと思います。
ここではシルク製品の本物と偽物の見分け方を解説します。
とはいえ買ってから調べる事になる為、偽物購入の予防とはなりません事をご理解下さい。
音を聴いてみる
シルクの生地を指で擦り合わせてみて下さい。
本物のシルクなら「キュッキュッ」と音(絹鳴り)がするはずです。これはシルク繊維の断面が三角形に近いため、擦ることで繊維が引っかかりこのような音が鳴ります。
燃やしてみる
生地を燃やしてみると本物のシルクなのか化学繊維なのかが容易に判別がつきます。
絹は人間の皮膚、髪と同じタンパク質で出来ている為、髪を燃やした時と同じ燃え方をします。
シルクの場合、火を付けた部分だけが燃えて火を離すと消えます。燃えカスは潰すと粉のようになります。
一方、化学繊維の場合は火を離してもボーっと燃えており、燃えカスは潰すとベチャッとしており石油独特のカスになります。
シルクアイテム手作りのすすめ
先述しましたが、私はシルクの偽物や質の悪い物を買ってしまったという苦い経験があるので、シルク製品は信頼している所で買うか、もしくは自分で作成しています。
布屋さんで自分の目で見て、触って、音を聴いて、店員さんに質問して、納得のできるシルク生地を買うのもそれはそれで楽しいものです。
以前シルクの枕カバーを作りたくて生地を調達してきました。
日本製の100%シルク、羽二重です。これで¥2,900でした。
自分で真剣に選んだ生地だからこそ愛着が沸きます。
羽二重は平織なのに大変柔らかくて光沢も美しいので見ているだけで惚れぼれします。私のお気に入りの織り方です。
枕2つ分のカバーが作成できました。表面のみシルクを使い、裏地と裏面はいらない布で作成したので1つ約1,500円で作れた計算になります。
自分で作るのもなかなか楽しいものです。
いらなくなった着物や中襦袢でも作れますので是非お裁縫できる方は自作してみてはいかがでしょうか。
まとめ
先述したシルク(絹)の種類について表にまとめました。
【蚕の分類】
蚕 | 説明 | 特徴 |
家蚕糸 | 人間の都合よく品種改良された言わば「家畜化」された蚕の繭を使った糸 | 白い |
野蚕糸 | 世界中に存在している野生の蚕もしくは野生に近い環境の蚕の繭を使った糸 | 少し茶色で染色しにくい |
【糸の分類】
糸 | 説明 | 特徴 | 品質 |
生糸 | 繭から引き出した糸を数本揃え合わせたもの。正絹ともいう | 長繊維で光沢があり大変美しく高級 | ★★★ |
絹紡糸 | 生糸を生産する際に出たクズ糸を寄せ集めて1本の糸にしたもの | 絹ならではの光沢感はしっかりある。生糸に比べ含気量が大きい為ふんわりしている | ★★ |
絹紬糸 | 絹紡糸を作る際に出たクズ糸を寄せ集めたもので、言い方は悪いが生糸のクズのクズ | 太い糸で所々節がある | ★ |
【織り方の分類】
織り方 | 説明 | 特徴 | 絹の場合の呼称 |
平織 | 縦横交互に交差する織り方 | 摩擦に強い | 光絹、羽二重(たて糸が2本/絹織物の代表格) |
斜文織 | 綾織とも言い、織り目が斜めに走っている | 平織よりも柔らかく、シワが寄りにくい | ツイルシルク |
朱子織 | サテン織りとも言い、縦、横どちらかが浮きあがるように織られている | 光沢が一番あり大変柔らかい | サテンシルク |
絹は天然素材ならではの優しい質感と天然の空調作用で1年中快適に着用できる素晴らしい生地。
その恩恵は蚕という命の犠牲のもとに成り立っているという現実を忘れず、自然に感謝して大切に使いたいものです。
ー以上です。