脇汗の多汗症で悩まれている方には朗報なのではないでしょうか。
2020年11月下旬、原発性腋窩多汗症治療剤「エクロックゲル」が発売されました。
今までの多汗症治療は脇汗ボトックス注射、塩化アルミニウム溶液の処方、パースピレックス(デトランスα)で対応されてましたがどれも保険適用外。しかし「エクロックゲル」は保険適用です。多汗症治療の幅が広がりました。
一体どういう物なのか、そしてよく処方されてきた塩化アルミニウム溶液(パースピレックス、デトランスα)と何が違うのか、分かりやすくまとめたので参考にしてください。
※この記事を執筆するにあたり元わきがだった私の経験を含め、日本皮膚科学会の資料やインタビューフォーム等を参照しています。
本記事の内容
- 脇汗の処方箋エクロックゲルとは
- 処方基準が厳しいのが難点
- エクロックゲルとパースピレックスの違いと比較
- 私ならパースピレックス(デトランスα)を選ぶ
目次
脇汗の処方箋エクロックゲルとは
エクロックゲルは2020年11月末に発売された原発性腋窩多汗症の為の日本初の治療剤です。
科研製薬株式会社より発売されています。
作用機序
エクロックゲルは多汗症の原因となっているエクリン汗腺の働きを抑えることで多汗症にアプローチする外用剤。
交感神経から汗を出せという指令を受け取る受容体をブロックすることで汗が出るのを防ぐ抗コリン剤です。
アセチルコリンはムスカリン受容体と結合することにより、汗腺から発汗を誘発すると考えられており、本剤は多汗症の原因となるエクリン汗腺のムスカリン受容体と結合することでアセチルコリンの結合を阻害し、発汗を抑制します。
引用元:科研製薬株式会社
エクロックゲルの薬価
エクロックゲルの薬価は¥4,874、保険適用で3割負担だと¥1,462になります。
1本で2週間分20g。新薬ですので、2週間ごとの処方です。
薬の費用に加えて診療代もかかりますから実際に処方してもらうとなると更に費用はかさみ、だいたい¥2,000程になると考えられます。
副作用について
エクロックゲルの副作用は皮膚炎、紅斑、そう痒感、湿疹などが報告されています。従来の塩化アルミニウム溶液と同じような副作用ですね。
また、塗布部位に傷や湿疹などの肌荒れを起こしている場合、抗コリン作用によって散瞳、口渇等の症状が出る場合があるそうです。
特に重大な副作用は今の所無いそうですが、一応妊婦さんや授乳中の方、前立腺肥大による排尿障害の方は使用不可となっています。

処方基準が厳しいのが難点
多汗症患者にしてみれば今回のエクロックゲルの発売は嬉しい事なんじゃないでしょうか。
当然ながら処方箋ですので基準を満たしていなければ処方されません。まぁ、薬というのは医師が必要と診断しない限り処方できませんから当たり前の事です。
しかしこれが結構厳しいらしく、簡単に手に入れるのは難しいかもしれません。
エクロックゲルの適応が「原発性腋窩多汗症」と定められている為、その診断基準と重症度を満たさないといけないのですが、その基準は下記の通り。結構厳しいことが分かるかと。
原発性腋窩多汗症の診断基準
過剰な発汗が原因不明のまま6カ月以上認められること。
以下のうち2項目以上あてはまる事。
- 最初の症状が25歳以下である
- 左右発汗がある
- 睡眠中は汗が出ていない
- 1週間に1回以上多汗である
- 家族に多汗がいる
- 多汗によって日常生活に支障がある
更に、重症度判定の尺度であるHDSSによって下記の1~4に分類され、この内3または4に該当すること。
レベル | 発汗度合い | 日常生活 |
1 | 全く気にならない | 全く支障ない |
2 | 我慢はできる | 時々支障がある |
3 | ほとんど我慢できない | 頻繁に支障がある |
4 | 我慢できない | 常に支障がある |
なかなか処方されるハードルが高いですね。これらの基準に当てはまらない軽症の方は、塩化アルミニウム溶液やボトックス注射を従来通り用いる事となります。自費ですけど…
商魂たくましく診療しているクリニックなら診断基準満たしてなくてもホイホイと処方しそうな気はします…。
保湿剤でお馴染みのヒルドイド軟膏みたいにならないことを祈ります。

エクロックゲルとパースピレックスの違いと比較
エクロックゲルは従来用いられてきたアルミニウム溶液(パースピレックス、デトランスα)とは全く違う作用機序で働きかけますので効果や持続期間なども異なります。
処方箋の方が効果がありそうと思いきやそうじゃない事もありますので、実際にどっちを使ったらいいのか迷いも出てきます。
そこで、それぞれの違いを分かりやすくまとめてみました。
ちなみに私はパースピレックス(デトランスα)しか使ったことがありませんので、エクロックゲルの使用感や効果については不明です。その点についてはネットでの検索結果を引用させていただきました。
製品名 | 適応症 | 有効成分 | 効果の持続期間 | 効果の強さ | 費用 |
エクロックゲル | 多汗症(脇のみ) | ソフピロニウム臭化物 | 1日? | 調査中 | ¥1,462(保険適用) |
パースピレックス | 多汗症(脇、手足)、わきが | 塩化アルミニウム | 約3~5日 | 強 | ¥2,000~¥4,500 |
適応症
エクロックゲルは脇の多汗症に対して用いられます。
脇に効果があるなら手足にも使えそうと思いきや、脇以外の他の個所には使えません。データで有意な効果が得られなかったそうです。
恐らく脇と手足の皮膚の厚さや吸収率の違いによって効果がないのではないかっと私は思います。
また、汗が出るエクリン汗腺のみに働くので、アポクリン汗腺が原因のワキガには効果がありません。
一方でパースピレックス(デトランスα)は脇、足、手の多汗症に効果があり、わきがの臭いも強力に防ぐことが出来ます。
これはそれぞれの有効成分の違いと作用機序の違いによる為です。
効果の強さ
塩化アルミニウム溶液であるパースピレックス(デトランスα)の効果は言わずもがな、超強力です。
元わきがだった頃使っていましたが、ピタッと怖い位汗が止まり、わきが臭もかなり抑えられました。
-
-
デトランスα(パースピレックス)を口コミ!効果や副作用を徹底検証
続きを見る
エクロックゲルについては現段階ではまだ新薬であり使った方のレビューに乏しい状態ですから何とも言えません。
しかし、ある女医さんのブログには、パースピレックス(デトランスα)の方が効果が高いと書かれていました。
私が塗ってみた感じではパースピレックスのほうが効果が高いような気がしますがいまのところ塩化アルミニウム製剤との比較のデーターはないようです。
引用元:聖心美容クリニック
費用、コスパ
費用についてですが、エクロックゲルは処方箋という事もあり値段が安い印象がありますよね。
しかし新薬であるため2週間に1本(2週間分)までという制限があります。
薬代に加えて診療代もかかりますから、結局月に¥4,000程かかると見込まれます。
一方パースピレックス(デトランスα)は購入場所によって¥2,000~で購入可能です。
1回塗布すると3~5日効果が持続するので1本で3か月は余裕に持ちますから、月に¥1,000程のコストで済むかと思います(エクロックゲルは1日1回の塗布)。
以上を踏まえると、パースピレックスの方がコスパが良いのではないでしょうか。
-
-
デトランスα(パースピレックス)の最安値は?通販サイト徹底比較
続きを見る
私ならパースピレックス(デトランスα)を選ぶ
こうしてエクロックゲルとパースピレックス(デトランスα)を比較すると、適応症状や範囲、コスト、効果においてパースピレックス(デトランスα)の方に軍配が上がりますね。
というわけで私は後者を間違いなく選択するでしょう。
もう少しエクロックゲルの処方ハードルが下がり、今よりももっと値段が安くなれば魅力的だと思います。
まとめ
今まで多汗症治療の薬が処方箋で存在してなかったので今回のエクロックゲルの発売は衝撃でした。
脇の多汗症に悩む方にとって治療の選択肢が広がったことは本当に素晴らしい事です。
これをきっかけにワキガ治療薬も保険適用で処方される日が来ると良いですね。
ー今日は以上です。