
「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」
時間潰しにたまたま入った書店でこの本を買いました。
棚には様々な健康本がズラリと並べられており、「○○フリー食」、「○○で痩せる!」、「○○を摂る人はなぜ健康なのか?」、「○○は老ける」といった意外性があり目をひく表題の書籍が沢山陳列されていました。
しかしなぜか私はモノトーンかつパッとしないこちらの本へ自然と手が伸びた。パラパラめくり、「コレだ!」と瞬時に思い購入する事となりました。
内容をざっくり言うと、大部分がレベルの強い複数ものエビデンスから導き出された結果を伝えているだけであり、紹介されている健康に良い食事とは限りなく「シンプル」かつ「普通」であり意外性はほぼ無いに等しいものでした。
肩透かしを食らう内容ではあったのですが、実に多くの情報に溢れている時代なだけに、目新しく、そして意外性のある根拠のない偏った情報をリセットさせ原点に戻してくれる、そんな本だと感じました。
加えて、これまで何冊も健康や美容に関する書籍を読んできましたが、実に玉石混交の眉唾物が多い中この本は大変信頼できるものだと思いました。
少しでも皆に知ってもらいたく今回書籍の紹介と要約、そして美容オタクである私が実際に学んで実践している事を記事にしました。
本記事は、書籍の発行所である東洋経済新報社様より表紙、文章、図、表の転載、利用の許可を得た上で執筆しています。
目次
「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」とは
「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」は、内科学助教授であり医師でもある津川友介氏によって書かれた栄養、健康本です。
科学的根拠のある健康に良い食事について、実に多くのエビデンスと共に図表を用いながら分かりやすく紹介しているのがポイント。
そしてそのエビデンスにおいてもレベルが存在しており、本当に信頼できるエビデンスをは何か、どのような情報を信じたら良いのか、その点について素人でも容易に理解しやすい文章で解説されています。
この本から学べた事
この本から学べた事を簡潔に紹介します。
もちろん引用、転載に関し東洋経済新報社様より許可を得ております。
本当に健康に良い食事と悪い食事
紹介されていた本当に健康に良い食事と悪い食事については下記の通り。
この本で一番大切な部分です。

本当に健康に良い食事
- 魚
- 野菜と果物(フルーツジュース、じゃがいもは含まない)
- 茶色い炭水化物
- オリーブオイル
- ナッツ類
数多くの信頼できる研究によって本当に健康に良い(脳卒中、心筋梗塞、がんなどのリスクを下げる)と現在考えられている食品は、①魚、②野菜と果物(フルーツジュース、じゃがいもは含まない)、③茶色い炭水化物、④オリーブオイル、⑤ナッツ類の5つである。
引用元:p28 1~3行
茶色い炭水化物とは、玄米、蕎麦、全粒粉といった精製されていない炭水化物の事です。
一方健康に悪いとされている食事がこちら。
健康に悪い食事
- 赤い肉(牛肉、豚肉、加工肉など)
- 白い炭水化物
- 飽和脂肪酸(バターなど)
逆に、健康に悪いと考えられているのは、①赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない。ハムやソーセージなどの加工肉は特に体に悪い)、②白い炭水化物、③バターなどの飽和脂肪酸の3つである。
引用元:p28 4~6行
白い炭水化物とは、白米、うどんパスタ、小麦粉などの精製された炭水化物の事でして、皆さんが主食としてよく口にするものではないでしょうか。
白米は精製過程で食物繊維をはじめとする様々な栄養が取り除かれている為、砂糖とほぼ本質的には同じだそうです。よって食べるよりも食べない方が無難であり、「少量でも体に悪いと言っても良いだろう」と著者は述べています。
p32 表1-1 健康に良いかどうかで分類した5つのグループ
グループ | 説明 | 食品の例 |
グループ1 | 健康に良いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品。 | ①魚、②野菜と果物、③茶色い炭水化物、④オリーブオイル、⑤ナッツ類 |
グループ2 | ひょっとしたら健康に良いかもしれない食品。少数の研究で健康に良い可能性が示唆されている。 | ダークチョコレート、コーヒー、納豆、ヨーグルト、酢、豆乳、お茶 |
グループ3 | 健康へのメリットもデメリットも報告されていない食品。 | その他の多くの食品 |
グループ4 | ひょっとしたら健康に悪いかもしれない食品。少数の研究で健康に悪い可能性が示唆されている。 | マヨネーズ、マーガリン |
グループ5 | 健康に悪いということが複数の信頼できる研究で報告されている食品。 | ①赤い肉(牛肉や豚肉のこと。鶏肉は含まない)と加工肉(ハムやソーセージなど)、②白い炭水化物(じゃがいもを含む)、③バターなどの飽和脂肪酸 |
とはいえ、体に悪いから食べるな!という事が言いたいのではありません。あくまでも研究上は「悪い」のであって、量と質の問題、そして全体的なバランスが大切だと考えます。
決して「絶対食べてはいけない」という訳ではありません。
目から鱗の情報
私がこの本を読んで目から鱗だった情報は下記の通り。
- フルーツジュースは良くない
- リコピンが体に良いという根拠はない
- 日本食が健康に良いという根拠は無い
フルーツジュースは果汁100%なら体に良いとばかり思っていたのですがエビデンスによるとそうでは無いそう。加えて野菜ジュース、ピューレも同じく。
というのも、フルーツジュースは加工の段階で果糖だけとなっている(不溶性食物繊維が取り除かれている)為糖尿病リスクが上がることが懸念されているのだそうです。
リコピンが体に良いとばかり思っていたのですが、実はこれには根拠がないとの事。トマトは確かに健康に良い食品ですが際立って良いというエビデンスも無いそうです。
以前美容皮膚科学会でトマトの有効性についての研究結果を聴いた時とても感銘を受け、それ以来美肌の為にトマトを積極的に摂取していました。しかしそれには根拠が無いという文言。驚かされました。
日本食は健康食として海外でも親しまれていますが、健康に良いという根拠は無く、むしろ塩分が多い為健康上のリスクが懸念されているそうです。
成分ではなく食品を
健康的な食事をする点において、「成分ではなく食品を意識する」事が大切だと説かれています。
成分信者となって特定の食品を集中的に摂取したりサプリメント信仰になってはいけないという事です。
先述したリコピンの件でもそうですが、トマトに含まれるリコピンだけに気を取られてリコピンサプリメントに走ったり、トマトを過剰な程食べるといった極端な行動を止めるべきという事が分かりますね。
この本ではβカロテンを例にとって解説されていました。緑黄色野菜は病気リスクを下げるがβカロテンをサプリメントで摂取すると病気のリスクが上がることが証明されているそうです。
成分至上主義はマーケティングにおいて消費者の興味を沸かせるのに大変好都合なものである事を認識すべきですね。
とはいえ全てのサプリメントを悪として見なす事を勧めている訳ではありません。ビタミン全般、鉄、亜鉛などは上手に摂取する為にもサプリメントに頼る事も時には必要だと私は考えます。食事を前提とし、誇大広告に惑わされることなく上手にサプリメントと付き合っていきたいものです。
地中海食のすすめ
本に紹介されている「本当に健康い良い食事」を意識すると、行きつく先は「地中海食が良い食事」だという結論になります。
地中海食は複数のエビデンスで健康に良いという地位が最も確立しているそうです。
地中海食と聞くとアクアパッツァ、ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)、ホムス(ひよこ豆とニンニクのディップ)、サルスエラ(魚介のトマト煮込み)といった凝ったものをイメージしがちですが、そのような本格的な材料で作った地中海食ではなく、オリーブオイル、ナッツ類、魚、野菜、果物をたっぷりと摂取し赤い肉を避けるという食事法と、とらえて下さい。
下記の表は本の内容の一部を撮影したものです。
地中海食を取り入れる事は比較的容易である事が分かるかと。

p64 図2-1 地中海食の概要
わざわざ地中海料理のレシピを検索する必要はありませんね。
ここで大切なのが、健康に悪いとされている赤い肉や白い炭水化物、お菓子、スイーツなどは絶対食べない、といった極端な考えをしない事です。
その点に関し著者は「食べるべきではないと主張しているのではない」と述べており、メリットとデメリットを十分に理解した上で選択するよう勧めています。

エビデンスレベルについて
この本にはエビデンスにレベルがある事についても解説しています。
エビデンスレベルを強い物順に並べると下記の通りになります。
エビデンスレベル
強
・メタアナリシス(複数のランダム化比較試験を統合した物)
・ランダム化比較試験
・観察研究
・個人の経験談、専門家のエビデンスにもとづかない意見
弱
引用元:p38 図1-1 エビデンスの階層
メタアナリシスの中でも、複数のランダム化比較試験をまとめたメタアナリシスこそが、「最強のエビデンス」と言えるのである。
引用元:p37 4~6行
エビデンスでは~と聞くと一見かっこよく聞こえ、さも信用できそうなニュアンスに捉えられますが、上記を知っておく事で言葉を巧みに操った情報や商品の判断材料として大いに役立つと思います。
この本を読んだ私の感想
冒頭でも述べたように「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」を読んだ感想を率直に言うと、意外性も無ければ目新しさも無く普通過ぎる内容でした。
一部(リコピンに根拠ない事やフルーツジュースが良くない事など)自身のこれまで信じていたことを覆す部分がありましたが、それでも突出した意外性は感じられませんでした。
野菜や果物、ナッツ類、茶色の炭水化物などが体に良い事は多くの方が既に知っているだろうし、加工肉や赤い肉などが体に悪い事も知っている方が殆どなのではないでしょうか。
しかしこの本がとても良本だと思ったのは、一つ一つに対して最強のエビデンスを挙げながら分かりやすく説明されている為信憑性が高く、この本の内容を頭に入れておく事で偏った情報に翻弄されることなく原点に考えを戻してくれるからです。
また、著者はあくまでもエビデンスに基づき正解に近いと考えられる事を述べているだけであり、エビデンスレベル的に不確かな部分に関してはその点もはっきり述べています。これもこの本が信頼できる理由の一つでもあります。
これまで多くの健康本を読んできましたが、ここまで根拠を追求した啓蒙的な本は初めてです。
この本を読むことで、
- 医師、栄養士監修
- 専門家が開発に携わった
- 最新の研究によると
- エビデンスにもとづく
など、専門性をアピールしている情報や商品にすぐ飛びついてしまうのを防いでくれるのではと私は思います。
ですから様々なマーケットや間違った情報に惑わされない為にも是非読んで欲しいお勧めの一冊です。
我が家の地中海食実践法
早速我が家でも地中海食を実践してみました。
我が家の地中海食実践法
【主食】玄米、白米を混ぜたもの
【おかず】野菜+魚or鶏肉
【汁物】半量
【調理油】オリーブオイルorごま油
【つまみ】チーズ
【おやつ】ナッツ類、ブラックチョコ
【食後のデザート】果物
【麺類】蕎麦(二八、十割)、全粒粉パスタ
【主食】
好物の白米をいきなりパサパサした玄米に切り替える事が困難な為、白米と混ぜたりして摂取しました。
【おかず】
魚か鶏肉中心ですが、週に1,2回は牛、豚肉も食べています。
【汁物】
過剰塩分防止の為半量にするか、減塩タイプの味噌を使用。
【おやつ】
たまに砂糖の入ったお菓子が食べたくなるのでそういう時はメリットとデメリットを考えた上で楽しみながら食べています。
他に気を付けていることは、大人は乳製品を控えめにし、卵は週6個までにしている事でしょうか。
一か月ほど続けているのですが、元々我が家では魚がメインの健康食家庭ですのでストレスなく続けられています。
特にこれといった体調・健康・美容的な変化はありませんが、なるべく日々健康的な生活を積み上げていきたいと思います。
さいごに
「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」は内容がある意味とてもシンプルでした。
しかし情報化社会において情報の取捨選択する為のヒントを与えてくれる良本だと私は思います。
原点に戻って冷静に物事を考え、本当に必要な物は何なのか、何もしない事も選択肢の一つなのではないか、と改めて考える力を養ってくれる本でした。
ただこれだけは忘れないで欲しいのですが、食事というのは楽しみの一つでもあるという事。
お菓子もカップラーメンも白い炭水化物も赤い肉も食べていいんです。要は全ての食品においてメリット・デメリットがあるわけで、全体的なバランスを考えて摂取する事が大切という事です。
極端に行動するのはよくありません。その点お忘れなきよう。
ー以上です。